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2023.12月更新

変革への軌道 描くビジョン ~CHANGEに向けて~/代表取締役社長 執行役員 伊藤 直紀
CHANGE ニチノベーション2026

Q 上半期の業績について教えてください

本年度上半期の業績は、売上高・利益ともに計画を下回る結果となりました。株主の皆さまにはご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。

ウクライナ危機に端を発するサプライチェーンの混乱は沈静化しつつあり、当社グループの主要顧客業界における自動車の生産は着実に回復しています。伴って金型事業、精密部品事業の売上高は増加しましたが、EV(電気自動車)シフトの加速化などにより、当社がコアビジネスとしている領域が想定より伸び悩み、また製品構成の変化も相まって利益率を損なう要因となりました。また、フィルタ事業は、中国での旺盛な需要が落ち着いたことから減少に転じ、その減少幅を国内向け販売で奮励するもカバーするに至らず対前年で減収減益となりました。これらの結果を受けて、2024年3月期上半期の業績は、連結売上高は54億2千6百万円(前年同期比3.4%増)で着地しました。利益面では、営業損失1億8千8百万円(前年同期は1億4千3百万円の営業損失)、経常損失1億1千9百万円(前年同期は2千5百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は1億6千8百万円(前年同期は1億5千1百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。

以前から強調している通り、自動車産業は100年に一度ともいわれる構造変革が起きており、カーボンニュートラルに向けたEVシフトが加速しています。これに対応するため、当社グループでは、新たな価値を創出するイノベーションを大きなテーマにした全社的な中期経営戦略「CHANGE~ニチノベーション2026~」を掲げ、各施策を推進してきました。組織再編や事業ポートフォリオの再構築は進んでいるものの、経営環境の変化は予想以上に速く、かつ大きなものであるため、より抜本的な対策が必要になってきている状況です。

Q 認識している重要課題は?

当社グループは、ここ数年、新型コロナウイルス感染拡大と半導体供給不足により自動車の数量ベースでの減少に直面してきました。さらに現在は、量的な課題に加えて、従来の内燃機関自動車からEVへの移行に伴う質的な変化への対応も迫られています。この双方の要因により業績に影響を受けている状況です。次ページ表に記載している現状認識から、当社グループでは、戦略的かつ具体的な対策が必要な4つの重要課題に取り組んでいきます。

① 自動車産業の変革への対応

精密部品事業で扱うターボチャージャー部品は、ここ数年、パワートレインの変化に関連する技術トレンドの影響を受けてきました。さらに近年では、金型事業の主力製品である精密鍛造金型にも技術変化の波が押し寄せています。自動車産業はEVに資源を注力しており、内燃機関自動車分野の開発が減速しています。当社の「開発力」を活かし、EV関連の新たな需要に対応していきます。

② 新事業の創出

2021年度に新事業開発部を立ち上げ、新しいビジネスの芽を育てています。自動車産業の転換期に即して、顧客業界を多様化させる発想を持ちながら新事業の創出を目指します。

③ 海外市場の開拓

自動車産業の変化とコロナ禍の収束に伴う競争環境の変化から、当社グループの海外戦略は転換点を迎えています。タイやインドを含むアジア地域からの需要獲得は引き続き不可欠な状況です。注力しているインド市場は、当社の強みとお客さまのニーズのすり合わせに課題を感じています。成熟している国内市場だけでは持続的な成長が難しいため、本格的な海外展開に向け、戦略を見直していきます。

④ 新しい働き方の確立

情報技術の進歩に伴い、新たなデジタルサービスを利用した、より効率的な業務運営が求められてきています。しかし、当社の「ものづくり」は人によるすり合わせを大切にしていることから、従来の考え方のまま対策を進めている点があります。労働人口減少と人手不足への柔軟な対応が要請されているなか、より柔軟な発想を取り入れていきます。

コロナ禍以前の環境認識   現状認識
  • ●自動車の数量ベースでの成長鈍化とEVを中心とした次世代自動車へのシフトが急加速
  • ●CASEなどにより従来の産業構造とビジネスモデルが大きく変化し、業界再編の動きが加速
 
  • ●以前から見えていた、内燃機関部品の開発の減退はより鮮明に
  • ●EV化の影響は、金型事業にも質、量的に影響が出始めている
  • 内燃機関自動車分野依存からの転換を急速に進める必要あり
  • ●自動車産業が変化しているなかでも、タイ、インドなどアジア地域を重視する姿勢は変わらず
 
  • ●自動車産業の影響を受け、当社の海外拠点は苦戦している
  • ただし、タイ、インドなど戦略地域としての位置付けは変わらず
  • ●DXなど情報技術の活用による業務変革の必要性の高まり
  • ●新型コロナウイルス対応以外にも時代の変化に合わせた新たな働き方の確立(介護・育児・時短・テレワークなど)
  • ●ダイバーシティーの推進
 
  • 新型コロナの収束後も、DXの情報技術の活用は拡大している
  • ●「働き方」「ダイバーシティー」に関しても、引き続き変化への対応が求められる
  • 「社員が輝き続ける会社づくり」に関する対応は、より強固に進める必要があり、風土改革に向けた取組みを行う

Q 当社が向かう方向性・現在の状況は?

当社の経営ビジョンは、3Eカンパニー※の実現です。このポイントの1つに、「他社ではできない製品と他社の追随を許さない高い技術力」の追求があります。しかし、現状としては既存事業の強靭化と共に新たな成長の種を探索している状況で、いわば過渡期を迎えています。いち早く将来的に期待できる領域を見定め、「選択と集中」を実施し、来期以降の成長につなげていきたいと考えています。

当社グループは、「CHANGE」をスローガンとし、それに基づいた施策を進めてきました。しかし、現在の経営環境や先に述べた4つの重要課題を考えると、さらに意識を高めて取り組んでいく必要があると痛感しています。現在は「新製品開発」「人財」「海外展開」「ものづくり改革」をキーワードに取り組みを進めており、本格的な「CHANGE」に向けてマネジメントを強化しているところです。

キーワード① 新製品開発
コア技術である精密鍛造技術や焼結技術を基に新たな領域探索に注力し、ニッチな分野でのトップを目指します。
キーワード② 人財
「社員が輝き続ける会社づくり」をスローガンに掲げ、ボトムアップでのチャレンジを推奨するなど、社員のモチベーションアップと生産性向上を目指します。
キーワード③ 海外展開
各拠点の強みを再定義し、海外戦略の改革を実施します。現地法人と協力し、グローバルでの競争力を強化します。
キーワード④ ものづくり改革
今後労働人口の減少を見据え、DXの推進を通じて省人化や生産性向上を目指します。そして、CO2排出量の削減やサステナビリティを意識し、従来のものづくりを時代の変化に合わせて、見直していきます。また、現在取り組んでいる金型センシングの技術開発を強化し、鍛造DXの実現を推進します。

Q 通期の見通しについてお聞かせください

フィルタ事業の売上高減少、精密部品事業の収益性低迷により、業績予想について下方修正を行うことといたしました。金型事業においても、海外向けが競争環境の変化などにより期初計画を下回る見込みです。

サプライチェーンの混乱は限定的となり、経済活動は進展すると想定しています。一方で、技術トレンドの変化が業績に影響することが懸念されます。こうした状況を受け、通期で連結売上高112億円、営業損失3億3千万円、経常損失2億5千5百万円、親会社株主に帰属する当期純損失3億円を見込んでおります。

Q 期末の配当についてお聞かせください

当社は、株主の皆さまへの利益還元を経営の重要政策と位置付け、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定配当を継続していくことを基本方針としています。本年度の中間配当については、この基本方針に則り、期初予想通り、1株当たり4円といたします。本年度下半期については、フィルタ事業及び精密部品事業が想定を下回る業績になることが予想されており先行き不透明な状況となっております。このような状況を鑑み、期末配当予想は未定とさせていただきます。今後の経営環境、業績動向など総合的に勘案した上で決定次第、速やかに開示する予定です。

株主の皆さまにおかれましては、引き続きご支援賜わりますようお願い申し上げます。

2024年3月期 通期業績予想 –通期予想の修正(2023年10月31日)–

(百万円)

表:2024年3月期 通期業績予想

※ 百万円未満は切り捨て

一株当たりの配当金

グラフ:一株当たりの配当金

事業別概況

グラフ:事業別概況

金型事業

グラフ:売上高、経常利益・利益率

※ 百万円未満は切り捨て

上半期の概況

海外向け製品が計画を下回る水準で推移したものの、国内向け製品が増加し、売上高が前年同期比増の傾向で推移しました。その結果、金型事業の売上高は24億2千万円(前年同期比6.8%増)、経常損失は8百万円(前年同期経常損失6千4百万円)となりました。

下半期の見通し

海外向け製品の見通しが不透明なものの、国内の需要の回復を見込んでおります。そのため、売上高の通期見通しは50億3千万円(前年同期比6.0%増)を予定しております。

精密部品事業

グラフ:売上高、経常利益・利益率

※ 百万円未満は切り捨て

上半期の概況

新規部品が増加したことにより、売上高が前年より増加しましたが、製品構成の変化により利益率が悪化しました。その結果、精密部品事業の売上高は18億2千6百万円(前年同期比4.4%増)、経常損失は1億2千7百万円(前年同期経常損失1億2百万円)となりました。

下半期の見通し

精密鍛造品は計画を下回るもののターボチャージャー部品の需要が増加することを見込んでおり、売上高の通期見通しは38億4千万円(前年同期比6.8%増)を予定しております。

フィルタ事業

グラフ:売上高、経常利益・利益率

※ 百万円未満は切り捨て

上半期の概況

海外向け製品の旺盛な需要が落ち着き、前年を下回る売上高となりました。経常利益について、売上高の減少と製品構成の変化により減少いたしました。その結果、売上高は11億7千9百万円(前年同期比4.3%減)、経常利益は1千6百万円(前年同期比88.5%減)となりました。

下半期の見通し

新たな需要開拓を強化していきますが、主要販売先の中国の経済状況が不透明であり、フィルタ事業の売上高は低調に推移するものと予想しております。そのため、売上高の通期見通しは23億3千万円(前年同期比7.0%減)を予定しております。

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